2008年
無言社会日本
毎日、灰色の雲に覆われた空からじとじとと小雨が降り、うすら寒くもの悲しいフランスの冬特有の天気が続いている。日本のカラッと晴れた冬空を恋しく感じる時期だ。
二〇〇七年の年末から一時帰国し、一月二日にフランスに戻り、三日から仕事が始まった。フランスの正月は元旦だけが休日である。年始は日本のように年頭朝礼や挨拶回りなどもなく普段と変わりなく仕事に入る。
“ボン・ジュール”だけではなく、そのあとに“ボン・ナネ(新年おめでとう)”という挨拶を交わすのだけがいつもと違う点だ。そして「休暇はどうだった?」という話題になる。私は年賀状を日本から持ってきて、今年はねずみ年だと説明しながらフランス人に配った。裏面には“賀正、本年もよろしくお願い申し上げます”と日本語で印刷したが、その文字を指して「これは何と書いてあるの?」と聞かれ、賀正は“A Happy New Year”と説明した。
さてフランスに住んで、時々日本に帰ると感じることがある。挨拶についてである。日本人はフランス人に比べて挨拶することが極端に少ないと感じるのだ。
空港で出国、入国の手続きをする際フランスの係官は必ず“ボン・ジュール”という。成田空港で日本人の係官は無言である。もっとも、パスポートを出すこちらも何も言わない。