何度も絶滅の危機にさらされたホモ・サピエンス
ホモ・サピエンス(現生人類)がアフリカで誕生(ホモ・ハイデルベルゲンシスが進化しました)したのは約20万年前でした。
このころからリス期の長い氷期に入っていきました。人類に必要な食物を確保することが難しくなり、こうした状態が12万3000年前まで続きました。
この氷期に直面した結果、ホモ・サピエンスの数は大幅に減少し、1000人を切るほどまでに減ったとミトコンドリアのDNA分析から推定されています。
逆にいいますと、この厳しい環境の中で突然変異が現れ、ダーウィンの法則のとおり、この環境にうまく適応し生き残ったのでホモ・サピエンスの誕生となったともいわれています。
現生の人類(ホモ・サピエンス)は、こうした世界的な寒冷期を生き延びた小集団の末裔(まつえい)なのです。
現在の世界の78億人はみな、この1000人の子孫です。この1000人はこのようなことはまったくわかってはいなかったでしょうが、希望をすてず、生きるために懸命に頑張ったことは確かでしょう。
私たち人類はみなその血を受け継いでいるのです。
ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界への分散を開始したのが8万5000年前頃でした。
スマトラ島のトバ火山は7万4000年前に大噴火を起こし、最大幅100キロという途方もなく大きいクレーターが残され、現在そこは巨大なトバ湖となっていますが、この噴火はここ200万年間で世界最大規模のものだったといわれています。
このトバ火山が噴き上げた灰は風に運ばれて北西へ吹きつけられ、インド亜大陸全体をおおい、3000キロメートル以上離れたマレーシアでは9メートル、インドでは6メートル、パキスタンでは2メートルの厚さの凝灰岩となっています。
このときインドに達していたホモ・サピエンスの骨がトバ火山灰の下から出てきましたので、一部のものはトバ大噴火の前にインドを通り越して東南アジアに入っていたのです。
しかし、この時もホモ・サピエンスは、トバ大噴火の気候変動によって総人口が1万人までに激減したといわれています。
このように人類は突発的な巨大噴火などによる絶滅の危機をそのつど突破して生き残ってきたことで、私たちの今の時代があるのです。