ハンセン・グループの厳しい予測
気候変動をめぐるすべての将来予測において最大の難点は、基本的なこと、すなわち大気中の二酸化炭素濃度がこれだけ変化すれば、気温はこれだけ変化すると明言できない点にあるといわれています。つまり、気候変動が温室効果ガス濃度に比例するのではなく、非線形であるということです。
たとえば、2万年前の最終氷期最盛期と、温暖な気候が安定的にスタートした1万2000年前のあいだに、世界の気温はおよそ5度温かくなったことはわかっています。その間に大気中の二酸化炭素濃度は180ppmから280ppmへと100ppm増加しました。
産業革命後の250年間にも(主として人為的)、大気中の二酸化炭素濃度は280ppmから390ppmへと100ppm以上増加しましたが、5度上昇するのではなく、実際には1度ぐらいしか上昇しませんでした。
一口に「地球温暖化」といっても、それが気候に及ばすフィードバック効果には、影響が数年、もしくは数十年単位で出てくる速効性のものもあれば、数十年から数世紀、もしくはもっと長いタイム・スパンで出てくる遅効性のものもあります。
温暖化によって蒸発する水蒸気が増え、雲におおわれる地表に変化が生じ、両極の氷が解け出し、永久凍土からのメタンが解放されたりするのが前者(速効性のフィードバック効果)であり、グリーンランドや南極の氷河が解け、これまで反射率の高かった氷河におおわれていた広大な地域に、黒っぽい、太陽の光を吸収しやすい、植物におおわれた土地が広がっていくのが後者(遅効性のフィードバック効果)であります。
これにその他さまざまな要素が加わるため、大気中にいったいどれくらいの二酸化炭素が留まると、後戻りのきかない温暖化(遅効性のフィードバック効果)を誘発するのか、科学者間でコンセンサスが得にくいといわれています。