医療起因性要件の推移
医療起因性の考え方として、2015年(平成27年)1月14日開催の第4回施行に係る検討会に西澤構成員提出資料として図6が提出された。
第4回施行に係る検討会は、「医療事故の定義」と「予期しなかった死亡」要件(省令事項)が主戦場であった。
この2つの大きなテーマに目途をつけた後、厚労省と「医療起因性」要件(通知事項)について詰めに入った。
筆者は医療法人協会修正案として図7を提示した。
2015年(平成27年)1月28日の厚労省提示案が図8(削除部分を明示し、筆者が厚労省に返信したもので、吹き出し部分は今回追加した)である。
詰めの段階に入っていたが、「管理者が医療上の管理に起因し…」との案文を「管理者が医療に起因し…」と修正を求めた。また、「院内感染の予防策に関連するもの」の記載の削除を求めた。実は、もう1点、「診察」の削除を求めたのである。「単なる診察で死亡するということなどあり得ない」。
聴診器を当てている最中に死亡することが、仮にあるとしても、聴診器を当てたことが死因になるということなどありえない。一旦、厚労省は診察の削除に同意した。
しかし、その後、連絡が入った。医療法の他の部分に、医療とは、「診察」「検査」「治療」との記載があるという。ここで、診察を削除すると法文上の整合性を欠くことになるので削除は難しいとのことであった。このため、やむを得ず、「診察」を残すことに合意。替わりに、医療法上の整合性のために「診察」が入っただけであることを明確にしてくれるように要求した。
その結果、それまで「下記の『医療』に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産」との記載であったものを、「『医療』(下記に示したもの)に起因し、または起因すると疑われる死亡又は死産」と修正することとなった。この意味するところは、「下記に示したものは、単に『医療』のリストである。『医療』に起因する死亡があった場合に医療起因性があるということなので、実質的には、『診察』に起因する死亡はない」ということである。下記が医療法上の「医療」の単なるリストであることは、第6回施行に係る検討会の席上、医療安全推進室長が、約束どおり明言した。結局、第5回施行に係る検討会に提示されたものは図9であり、「医療起因性の該当性は、疾患や医療機関における医療提供体制の特性・専門性により異なる」旨の個別性重視が明記された。
因みに、理解のために、筆者らが厚労省及び科研費研究班に提示した案(図7)について補足説明すると、※3部分は原則、医療起因性はないので、右枠内としたものであるが、他団体との関係上、左枠内に入れるということで厚労省と合意した。医療法人協会案が最も理解し易いと思う。