【人気記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない

医療事故の定義について

「医療事故の定義」部分が医療事故調査制度の核心部分であり、施行に係る検討会の天王山であるので、経緯を詳述したい。

1 医療事故の定義ポンチ絵の推移

施行に係る検討会の議論では、幸いにして、筆者が主導権をとることができた。たたき台となった日本医療法人協会医療事故調ガイドラインが注目を浴びたからである。

注目を浴びるということは、あらゆる方角からの集中砲火を受けることでもあったが、反面、厚労省担当部局と詳細に事前協議をすることともなったのである。

厚労省担当者は、医療事故を専門に取り扱う弁護士集団を柱とする団体から強い圧力を受けていたようである。同情の余地はあるが、それを承知でぎりぎりの攻防を行った。医療事故の定義はこの制度の根幹部分であり、基礎知識として必須の事項である。

事前配布の未定稿資料として厚労省が提示した資料の医療事故の定義部分が図1である。上部枠内のポンチ絵を見ていただきたい。

図1:厚労省原案ポンチ絵(第2回施行に係る検討会事前打ち合わせ資料)

これは、法の趣旨(「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡又は死産」であって、(かつ)当該管理者が「当該死亡または死産を予期しなかったもの」)を正しく反映していない。

筆者は、厚労省担当者に修正を求めた。2014年(平成26年)11月25日、(第2回検討会の前日)他の修正事項とともに手書きの修正ポンチ絵をFaxで厚労省に送り、その後、上京した。ホテルにチェックインした途端に厚労省から電話が入った。

筆者が提示した多くの部分が修正されたが、ポンチ絵部分はそのままで修正されなかった。このため、筆者は厚労省に飛んで行った。もう外は暗くなっていた。

厚労省は翌日の検討会の準備で、多くの職員が残業をしていた。既に、翌日の資料作成のために印刷機は回っていたのである。残業していた医療安全推進室長補佐にポンチ絵の修正を強く求めた。