医療事故の定義について
筆者らの主張(図2)と確定した厚労省提示医療事故の範囲図(図3)、さらには当初厚労省ポンチ絵(図1)を比較したものが、図4の色分けである。
筆者らが提示した医療事故の定義(図4左下)は、第4回施行に係る検討会厚労省提示医療事故の範囲図(図4上)と同じであり、全部がそろっている。ところが、当初の厚労省ポンチ絵(図4右下)を第4回施行に係る検討会厚労省提示医療事故の範囲図(図4上)と比較すると、「医療に起因せず、予期しなかった死亡」(報告対象外の事例)部分が含まれていないのである。これでは、不当に報告対象が拡がることとなる。医療事故の定義図は、これほど重要な部分だったのである。また、医療事故の定義に筆者らの主張が取り入れられたことで、医療事故調査制度の大半は解決した。第4回検討会で医療事故の定義が確定したことにより、筆者はとりまとめへと舵を切った。
予期しなかった死亡要件について
医療事故の定義の大枠は前述のごとく、目途がついた。続いて、医療事故の定義の2つの要件について述べたい。予期しなかった死亡要件に関して第4回施行に係る検討会で厚労省案が提示された。この省令部分は筆者に事前に提示されたが、筆者に異存はなかった。
厚労省内では、当初1号要件と2号要件のみであったが、3号要件が必要であろうということで追加されたようである。筆者が見た時点では、既に3号要件までそろっていた。このため、その場で、異議ないことを即答した。「予期しなかった」ということについて、省令で縛りがかけられた形ではあるが、考え方によれば、「予期しなかった死亡」につき、事前に要件を整えることにより、予防が可能である。この制度の事前理解が1丁目1番地であるという筆者の主張はこのことである。最終的には図5の如く、「予期しなかった死亡」につき、省令・通知事項が決定された。