【前回の記事を読む】「キ~ス、キ~ス、キ~ス、」飲み会で上司から公開告白。こんな席の場で、断れるはずもなく…
あなたの子供が生みたかった
3
「これから達也先輩と会うんでしょ?」
「うん。最近新しいプロジェクトが始まったみたいで残業が多いの」
「達也先輩は真面目に働きすぎるから、夜くらいはゆっくり休ませてあげないといけないよ」
「やだ、私から誘ったりなんてしたことないよ」
「それにしても、まったく彼氏との待ち合わせの時間つぶしの相手をさせられるなんて」
「感謝してるわ」「じゃあ、誰かカッコいい男を紹介してよ。達也先輩の会社の人と合コンするとか」
「一応言ってみるわ」
「一応じゃなくて必ず言ってね」
「でもね、さっきの占いの話、私当たってると思うの。だって私、早川先輩がいないとどうすればいいかわからないから。早く結婚したいな」
「はいはい、ごちそうさまです」
その年の美春の誕生日に、達也はプロポーズした。美春は泣きながら婚約指輪を左手の薬指にはめてもらった。
結婚式はコロナウイルスの影響もあり、少人数で行われた。沙也加は友人代表として一人出席した。
「美春は入社してすぐに、達也先輩に惹かれていました。その達也先輩がみんなの前で、サプライズで美春に交際しようと言ったときの美春の顔を、私はいまだに覚えています。あんな幸せな顔は今まで一度も見たことがありませんでした。
でも今日、達也先輩の隣に座っている美春は、あのとき以上に幸せそうな顔をしています。相思相愛で結ばれた美春、そして達也先輩、本当におめでとう」 会場中に拍手が鳴り響いた。
結婚後も美春は沙也加とたびたび食事をした。
「達也先輩のこと、なんて呼んでるの? まさかいまだに先輩なんて呼んでないよね」
「うん。当たり前だよ。達也って呼んでる。なんか達也って言うと本当に結婚したんだあって感じる」
「うらやましいなあ」
「彼氏はあれからまだできないの?」
「ダメ。きっかけ自体がなさすぎるんだよ。うちの会社にはろくでもない奴しか残っていないの、知っているでしょ? 新人に期待しているんだけど、期待外ればっかり。そういえば合コンの話はどうなったの?」