「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」​三大疾患、2人の医学博士が徹底解説。高齢者が自立して健やかな老後を送るためのノウハウ満載。医療従事者だけでなく、介護・福祉関係者も活用できる知識をお届けします。

第3章認知症の治療

◎症状によって処方薬を使い分ける

認知症は、患者さんの状態や経過などから治療方針を決めることが大切です。コウノメッドでは、診断名を重視せず、患者さんの「今現在の状態」に合った薬を使うことをポイントに据えています。

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認知症患者さんの症状は中核症状と周辺症状に大別されますが、周辺症状に対してはさらに3つのパターンに分けて考えます。

1)陰性症状:無気力・無言・うつ状態など、自分の内側に入り込んでしまう症状→現在よりも言動を活発にする効果のある薬(興奮系)を使う。

2)陽性症状:怒りっぽい・幻覚や幻聴・徘徊・暴力や暴言・過食・介護への抵抗など、興奮状態にあると考えられる症状→興奮を抑える働きのある薬(抑制系)を使う。

3)中間症状:陰性症状も陽性症状も存在しない状態→中核症状に効果のある認知症治療薬を使う。

薬は、一度処方したら終わり、ではありません。刻々と変わる患者さんの状態に合わせて不要な薬をやめたり、周辺症状改善から中核症状改善を目指したりします。

◎中核症状に対する非薬物治療

中核症状への対応としては、まず、分からないことを無理やり分からそうとするのではなく、本人が納得できるようにすることが大切です。

例えば、食事したことを忘れてしまって催促された場合には、簡単なおやつを用意したり、日付が分からなくなった人には大きなカレンダーを目につくところにかけておきます。人物誤認の場合には、その人になりきってしまったほうが良い場合もあります。

認知症になると何もできなくなるということではなく、ちょっとした手助けや工夫で自分でできることがたくさんあります。周辺症状の治療認知症のケアで特に問題となるのが周辺症状の治療や対応です。

これには大別して2つの治療法があります。