第3章 認知症の治療

周辺症状に対しての薬物治療

認知症に対する抗精神病薬の効果は?

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行動・心理症状(BPSD)に対しては、薬物を用いない対応が好ましいのですが、本人あるいは介護者に身体的な危険がおよぶ可能性がある場合には、薬物療法が適応となります。

興奮、不穏、幻覚、妄想、抑うつ状態、せん妄に対する抗精神病薬は少量から開始します。しかし、抗精神病薬使用による副作用は、少量の投薬でも出やすい傾向があります。

風邪などの感染症をきっかけに出現する場合が多く、錐体外路症状(体幹部の傾き、嚥下障害、動作緩慢)、傾眠、過鎮静、流涎、歩行障害などが投与開始後、長時間を経て出現する場合もあります。

そして投与を中止しても、相当な時間副作用が続きます。アルツハイマー型認知症に対する抗精神病薬が、認知症の精神神経症状に有効であるという十分な根拠はありません。

むしろ治療効果に関しては否定的な報告が多いようです。レビー小体型認知症には、抗精神病薬は原則的に使用しません。抗精神病薬使用による症状軽減の報告もありますが、根拠に乏しいようです。