◎周辺症状に対しての薬物治療

妄想、幻覚、不穏、興奮、うつ状態、脱抑制、易刺激性、異常行動などの周辺症状に対して薬物治療を行うことがあります。

アルツハイマー型認知症の周辺症状に対して、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル:アリセプト®)の効果が認められています。その他にもコリンエステラーゼ阻害薬(ガランタミン:レミニール®)、コリンエステラーゼ/ブチリルコリンエステラーゼ阻害薬(リバスチグミン:イクセロン®パッチ、リバスタッチ®パッチ)、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗薬(メマンチン塩酸塩:メマリー®)も効果が認められています。

アルツハイマー型認知症の周辺症状に対するコリンエステラーゼ阻害薬+NMDA受容体拮抗薬の効果は現在のところ明らかではありません。血管性認知症の周辺症状に対してもコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル:アリセプト®)の効果が報告されています。

いずれのタイプの認知症に対しても、抑肝散による漢方薬治療で症状改善の事例があります。低カリウム血症に注意すれば、6カ月以上の長期投与の安全性も報じられています。コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル:アリセプト®)に上乗せすることで、さらに周辺症状が改善するとのレポートもあります。

漢方薬・サプリメント(抑肝散、葛根湯、六味丸、明日葉、パナパール、肝細胞増殖因子、プラズマローゲンなど)も症状改善に有効かもしれません。

*用量は添付文書、国外の文献およびエキスパートオピニオンを参考,SDA:セロトニン・ドパミン拮抗薬、MARTA:多受容体作用抗精神病薬、DPA:ドパミン部分的作動薬留意事項:◯BPSDの治療では抗精神病薬は適応外使用になる。抗精神病薬は転倒・骨折のリスクを高める。◯わが国ではBPSDに対する抗精神病薬の有効性に関する十分なエビデンスはない。◯中等度から重度のBPSD、特に焦燥、興奮、攻撃性または精神病症状を治療の対象とする。◯副作用(歩行障害、嚥下障害、構音障害、寡動、無表情、振戦、起立性低血圧、過鎮静など)がみられるときは直ちに減量あるいは中止する
 

※本書で紹介している治療法等は、著者が臨床例をもとに執筆しております。万一、本書の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。また、本書に記載している薬剤等の選択・使用にあたっては、医師、薬剤師等の指導に基づき、適応、用量等は常にご確認ください。