「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」三大疾患、2人の医学博士が徹底解説。高齢者が自立して健やかな老後を送るためのノウハウ満載。医療従事者だけでなく、介護・福祉関係者も活用できる知識をお届けします。
中核症状に使われる主な薬
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ガランタミン臭化水素酸塩[商品名:レミニール®](ヤンセンファーマ、武田薬品工業)
米国や欧州各国で使用されており、日本でも2011年に認可されました。初期の患者さんの記憶を増強し、有効期間が長く、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に対して適応とされる薬です。
アセチルコリンエステラーゼ阻害作用と、ニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体)に対する感受性亢進作用を併せもち、神経の伝達効率を高める抗アルツハイマー型認知症薬です。薬の形状は錠、OD錠(以上、4, 8, 12㎎)、内用液(4㎎ /ml)で、用法は1回4㎎を1日2回です。初回投与量8㎎ /日、4週間経過して以後の維持量(16㎎または24㎎)に増やします。アリセプト®と同様に、薬の形状の種類が多く、嚥下困難の患者さんまで、ニーズにより選択が可能です。
副作用として、消化器症状や精神症状がありますが、これはコリンエステラーゼ阻害剤に共通するものです。
リバスチグミン[商品名:イクセロン®パッチ(ノバルティスファーマ)とリバスタッチ®パッチ(小野薬品工業)](パッチ剤、テープ剤)
アセチルコリンエステラーゼ阻害作用とブチリルコリンエステラーゼ阻害作用を持ち、軽度および中程度のアルツハイマー型認知症に効能効果があります。アルツハイマー型認知症治療薬では唯一のパッチ剤(貼り薬)です。
貼る部位は、背中、上腕、胸などの皮膚の上です。貼る場所は前回と異なる部位(離れた部位)に貼ります。規格は4種類の大きさがあり、含有量は、4.5㎎、9㎎、13.5㎎、18㎎で、用法1日1回、1回1枚です。投与方法は、初回投与量4.5㎎で、4週ごとに4.5㎎ずつ増量し、維持量は18㎎です。皮膚から吸収された薬剤が、肝臓を通らずに、直接脳に届くので、内服薬とは異なり胃腸への影響が少ないのです。
この貼り薬の登場で、アルツハイマー型認知症の治療選択肢が1つ増えました。パッチ剤の有効性は、最高用量のカプセル剤を投与した場合と同等で、しかも吐き気や嘔吐などの症状を1/3程度に低減できるといわれています。
アルツハイマー型認知症の患者さんは、薬の服用を忘れることが多いので、飲み薬を規則正しく服用するのは容易ではありません。本剤の特徴は、唯一の貼り薬であり、介護拒否者に適合し、服薬忘れ防止に有用なことです。
すなわち、貼り薬は剥がしさえしなければ、1日1回の貼り換えでよいので、患者さんおよび介護者にとって、非常に使いやすい薬となっています。
副作用としては、貼った部位の皮膚症状(発赤、かゆみ)やアセチルコリンが増えたことによる胃腸症状(吐き気)、治療開始時や増量時にめまいや眠気がみられることがあります。貼付部分を変えるなどのスキンケアに留意し、これらの副作用出現時には早めに主治医に連絡してください。
メマンチン塩酸塩[商品名:メマリー®](第一三共)
興奮・妄想・攻撃性・激怒・暴力に有効で、アリセプト®(ドネペジル塩酸塩)やガランタミン、リバスチグミンなどの「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」とは異なり、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗剤です。NMDA(N-methyl-D-asparticacid:NMDA)受容体拮抗作用により、グルタミン酸の神経毒性から保護する作用をもつ「NMDA受容体拮抗薬」です。
アリセプト®に次ぐ2番目のアルツハイマー型認知症治療薬として2011年に承認され、中等度から高度のアルツハイマー型認知症が適応です。
薬の形状および規格は錠剤(5, 10, 20 ㎎)およびOD錠(5,10, 20 ㎎)で、用法用量は1日1回、1回1錠です。初回服用量5㎎で、1週ごとに5㎎ずつ増量し、維持量は20㎎です。
OD錠は、口の中で崩れるので唾液だけでも服用できます。既に海外68カ国で承認されていますが、日本でも2011年3月から使用できるようになりました。
メマンチンは、中等度、高度のアルツハイマー型認知症の治療薬として、EUとアメリカで承認されています。副作用としては頭痛、めまい、ふらつき、便秘、傾眠などが報告されています。特に、高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス値:30ml/分未満)では慎重投与のうえ、維持量は1日1回10mgとします。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬との併用もでき、アリセプト®とメマリー®の併用療法に効果があるとのレポートがあります。
※本書で紹介している治療法等は、著者が臨床例をもとに執筆しております。万一、本書の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。また、本書に記載している薬剤等の選択・使用にあたっては、医師、薬剤師等の指導に基づき、適応、用量等は常にご確認ください。