東京都立広尾病院事件東京高裁判決と医師法第21条
【2】そこで、検討するに、医師法第21条は、「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と定めている(関連記事:関節リウマチ手術のため入院したAさん…経過は良好だった)。
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本件においては、まず、D医師がAの死体を検案して異状があると認めたと認定できるかが問題である。その事実認定に先立ち、当審においては、医師法第21条に定める「検案」の意義を争点の一つとして当事者間の議論がなされたので、この点につき、当裁判所の見解を示しておくことにする。
*ア まず、医師法第21条にいう死体の『検案』とは、医師が、死亡した者が診療中の患者であったか否かを問わず、死因を判定するためにその死体の外表を検査することをいい、医師が、死亡した者が診療中の患者であったことから、死亡診断書を交付すべき場合であると判断した場合であっても、死体を検案して異状があると認めたときは、医師法第21条に定める届出義務が生じるものと解すべきである。
イ 従来、医師法第19条2項、第20条に定める、死亡診断書を交付すべき場合と死体検案書を交付すべき場合の区別が論じられてきた。この点につき、昭和二十四年四月十四日厚生省医務局長通知(医発第385号。以下「昭和二十四年通知」という)は、
「1 死亡診断書は、診療中の患者が死亡した場合に交付されるものであるから、苟しくもその者が診療中の患者であった場合は、死亡の際に立ち会っていなかった場合でもこれを交付することができる。