新訂版出版によせて

新書版が出てから4年が経ち、少しずつですが発達障がいの診断に変化が見られています。DSM-5という新たな診断基準が世に出て定着してきたのです。成人向けADHDの例文が追記されるなど配慮があり、成人のADHDも診断されるケースが増えてきました。

何よりも「何々障害」という言葉がなくなり、「何々症」という言葉になったのです。このことは、新書で予告した通りです。「発達障害」という言葉も「神経発達症」になりましたが、未だに世間では「発達障害」という言葉だけは残っています。せめて「発達障がい」にして欲しいものです。

ただ、「神経発達症」という言葉は、まだ一般的には広く馴染(なじ)んでいないため、ここでは本の題名も含めて「発達障がい」という言葉を用いることとします。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。つい先日のことですが、それに先んじて障害者スポーツ団体から障害者スポーツの「害」の字を考慮して欲しいと漸(ようや)く国に打診がありました。少しずつですが「害」という字が日本から消えていく兆候が見られています。

言葉や字の問題だけではありません。

発達障がいに関しては、まだまだ現場の医師(小児科医や精神科医)が容易に診断できるには程遠い現実があります。診断できなければ当然治療もできません。

そこで筆者は2018年、医師向けの精神科雑誌に「思春期および成人期ADHDの簡易補助診断チェックリスト」を投稿し掲載(月刊「精神科」32(4):385-394, 2018)されました。まずは診断が容易にできることこそが重要だと考えたのです。私のクリニックで用いている、「思春期ADHDチェックリスト」を図1・2、「成人期ADHDチェックリスト」を図3・4として載せました。

○が2点、△が1点、×が0点で〈不注意〉〈多動・衝動性〉それぞれにおいて合計点を出し、各々11点以上あれば各々のタイプの ADHDの可能性が高く、両方とも11点以上あれば混合型ADHDの可能性が高いことになります。