第2章 医師法第21条と関連した注目事項
(1)死亡診断書記入マニュアルと医師法第20条
・判旨についての考察
1 医師法第20条について
医師法第20条は、「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、(中略)又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない」としている。
この但し書については前述したとおり、同趣旨の2つの通知が出されている。平成24年通知を中心に考察する。
判旨は、医師法第20条によれば、24時間を超えて医師の管理を離脱して死亡した場合には、診療中の患者とはいい難く、当該医師による死亡診断書の作成は禁じられていると述べている。
しかし、厚労省通知においては、医師が死亡の際に立ち会っておらず、生前の診察後24時間を経過した場合であっても、死亡後改めて診察を行い、生前に診療していた傷病に関連する死亡であると判定できる場合には、死亡診断書を交付することが認められている。医師法第20条に関する本判旨は誤りというべきであろう。
論点は「24時間を経過しているから死亡診断書の交付ができない」のではなく、「生前に診療していた傷病に関連した死亡であるか否か」なのである。
生前に診療していた傷病に関連した死亡であると判定できない場合には、死体の検案を行うこととなる。死体の検案を行って死体に異状があると認められた場合に、この時点で、初めて警察への届出義務が発生するのである。