【前回の記事を読む】私は、亡くなった夫の日記を勝手に読んだ。生前は読ませてもらえなかったが、そこには仕事への悩みが、かなり荒い言葉で書かれていて…

第1章 ボタンのありか

6 パパのいない日常へ

わかっていたの? パパ? だとしたら、さすがパパ!

だけど、寂しすぎるよ。私が頼りないから、万が一を思っていろいろと考えていたの?

パパは娘に「ママの面倒を見る子にこの家あげる」とも言っていたそうだ。それって自分が私より先に死んじゃう前提の話じゃないか?

そんなことまで考えていた時のパパの気持ちを考えると、しんどいと寝込んでいたパパに、“私だってしんどい!”とどこかで思って優しくしなかった自分が許せない。

我が家で一番の甘ったれは私だ。息子に託したノートには、死んだらすぐに、銀行が口座を凍結する前に、家族と、クリニックをとりあえずしのぐお金を引き出しておくこと(どちらにしろ、相続税は亡くなった日の残高にかかってくるので引き出しても問題はない)、保険がどこか、携帯でのパスワードはそれぞれ何かなどなど、細かく書いてあった。

そんなことを考えるくらい、体がしんどかったの?

私は、ここ数年「マジきついよー、もうリタイヤしようか、どうにかなるよ」と弱音を吐くパパに「大丈夫だよ!パパは」と、パパが大袈裟に言っているだけだと思い込み、無責任に尻をたたいていた。やはり鬼嫁だ。

買い物が大好きな娘は、パパが亡くなる少し前に一緒に近くのスーパーに買い出しに行こうとパパに誘われたが行かなかった。彼女はそれをとても後悔している。

なぜなら、それは、そのまた少し前にパパが初めて買った新車で行く買い物だったから。

娘は、パパの運転でその車に乗ることはなかった。私には中古でなく新車を買ってくれたのに、自分には50歳になるまで中古車しか買わなかった。

パパは初めて買った新車に娘を乗せることはなかった。今その車に娘を乗せているのは私だ。私だけがいい思いをしている。

また後ろめたさに打ちのめされる。パパ、ごめんなさい。