【前回の記事を読む】ひと通り調べられた殺人現場で、モミジの幹に弾痕を発見…被害者の頭と同じ高さの穴をライトで照らすも、そこにあるはずの弾丸がなく…
ダウト1――銃殺を疑え
「ちょっと待ってよ、もう。何でうちの部署にはこんな風変わりな人間しか来ないのかしら」
詩は愚痴りながら高井良を追いかけた。それから2人は公園にいた人々に事件に関して訊ねて廻ったが、有力な情報は全く得られなかった。疲れた2人はベンチに座り込んだ。
「ほら、やっぱり事件について知ってる人なんていないじゃない。もうこれ以上やっても無駄だよ」
「いや、まだ公園の中で調査しただけじゃないですか。これから公園の周囲を洗いましょう」
「公園の周囲! どれだけ時間がかかると思ってんの。私達2人しかいないんだよ。それに周囲の地取りはもう一課がやってるって。もう帰ろうよ」
「光信さんは帰っていいですよ。僕1人でやりますから」
「いや、そういうわけにはいかないのよ……」
「ところで係長って一課でも有名なんですね。ほら、さっき辻さんが係長の話をしてたじゃないですか」
「ああ、天蓋さん、昔は捜査一課にいたみたいよ。辻さんとはその時一緒だったみたい。私もよく知らないんだけどね」
「えっ、一課に? すごいじゃないですか。係長にお会いしたら捜査手法を色々教わりたいです」
「捜査手法をマスターする前に雑学王になるかもしれないけどね」
「あのお、すみません、この人を見かけませんでしたか?」
2人の前にジャージ姿の女性が現れ、1枚のビラを見せた。詩が受け取って見ると、そこには白髪の老人男性の写真が載っていた。
「いえ、見てませんけど。どうされたんですか?」
「私はこの近くの介護付き老人ホームの職員なんですが、この人は後藤悟さんという75歳の入居者の方なんです。認知症があって以前から施設を抜け出して徘徊することが多かったので、注意していたんですが、10月9日の夜から行方不明になってしまって、職員で手分けして捜してるんです」
「そうですか。警察には届けたんですか?」
「はい。でも警察も忙しいらしくて」
「分かりました。見かけたらすぐご連絡します」
「ありがとうございます」
女性は礼を言うと立ち去った。