【前回の記事を読む】捜査一課は薬物取引中のトラブルと推測…『犯人は“それ”が欲しくて来たはず』なのに、遺体のポケットには薬物が残ったままだった

ダウト1――銃殺を疑え

2人が事件があった東側の林の前にやってくると、まだ黄色い規制テープが張られたままだった。

「え、これ入っていいの?」

「僕達警察なんだから入っていいに決まってます」

2人は規制線を掻い潜り、現場を探し回った。

「ああ、ここです。写真と同じ場所です。ほら、木の根元の形もおんなじ」

「本当だ」

高井良が持っている写真を覗き込みながら詩が言った。高井良は地面にしゃがみ込んで山本が倒れていた所を頻りに調べていた。

「さすがに証拠になるようなものは全部持ち去られていますね」

「やっぱり一課が検証した後の現場を調べても何も出てくるはずないよ。それとも半径50メートル周囲を2人で弾丸捜すつもり? 私はそんなのしないからね」

「あっ!」

高井良が大声を上げたので詩はびくっと身を縮めた。

「ちょっと、脅かさないでよ。何よ」

「見てください、これ」

高井良は倒れていた山本の足の近くにあったモミジの木の幹を指差した。そこには弾痕としか考えられないような穴が開いていたのである。

「これって……」

「弾痕ですよ。間違いない。山本は身長168センチメートルでした。僕が171センチですから頭はこの辺だったはず。ほら、ちょうどこの穴と同じ高さだ。つまり、山本はこの木の近くに左耳を向けるように立っていた。そこで右側頭部を銃で撃たれ、仰向けに倒れた。つまり、弾丸はこの穴の奥にあるはずだ」

「でも、こんなにすぐ分かる穴に一課は気づかなかったのかしら?」

高井良はペンライトで穴の奥を照らした。

「ない」

「えっ」

「弾丸がないです」

「どういうこと……」