高井良が刑事総務課の部屋を訪れると、すぐ近くにストレートミディアムの茶髪の若い女性が机に座っていた。
「すみません、僕、刑事教養第3係の高井良といいます。庶務係の保倉さんはどちらにいらっしゃいますか?」
「あっ、私が保倉ですけど」
コロネが顔を上げると、高井良は思わず目を丸くした。ハッとするような愛くるしい女の子だったのである。
「あ、あの、Y公園銃撃事件で殺害された山本学の司法解剖の結果が出たって聞いたんですけど」
「ええ、捜査一課から保存するための資料が届いています」
「それってお借りすることできますか?」
「えっ」
「あっ、駄目ですか?」
「天蓋さんから言われたんですか?」
「えっ、あっ、そ、そうです。係長からの指示で『資料を早く借りてこい』って言われて……」
「分かりました。捜査資料管理室に保管してありますので、一緒に来てください」
「ありがとうございます」
高井良は廊下に出たコロネの後についていった。
「あの、コロネさんってすごくかわいらしいお名前ですね」
高井良の言葉を聞いて前を歩くコロネがピタッと立ち止まり、ばっと振り返った。
「誰が私の名前を教えたんですか?」
「え、いや、その……」
「気安く下の名前で呼ばないでください。私、天蓋さんにも詩さんにも下の名前で呼ぶなんて失礼ですっていつも注意してるんですけど、あの人達全然言うことを聞いてくれないんです」
コロネはふくれっ面で愚痴った。
「いや、あの天蓋も詩も下の名前だと思うんですけど……」
「私、実家がパン屋で、両親が何を血迷ったか、事もあろうにパンの名前を私につけたんです。それで子供の頃からみんなから『菓子パン』とかいじられて……その人達を見返してやろうと思ってパン屋も継がずに警察官になったんです。それなのにここでもいじられるなんて許せません」
「いや、僕は絶対馬鹿になんてしてません。ただかわいい名前だなと思って」
「全然かわいくなんかないです」
コロネは不機嫌な様子で再び廊下を歩きだした。捜査資料管理室のドアをカードで開けて2人は室内に入った。コロネは鑑識報告書、司法解剖記録とその他資料が入った段ボールを探し出すと高井良に手渡した。
「今日中に返してくださいね。絶対に無くさないでください。もし何かあったら私達2人とも処分されますから」
「わ、分かりました。すぐにお返ししますので。ありがとうございます」
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