【前回の記事を読む】配属先は『刑事教養係』。だがこれは表向きで、裏では刑事部長からある人物を監視するよう指示されていた。その対象は、これから直属となる上司で…

ダウト1――銃殺を疑え

「係長はそんなに言葉遣いに厳しいんですか?」

「厳しいなんてもんじゃないわよ。私なんてここに初めて来た日にそれで大泣きしちゃったんだから。

『刑事教養第3係にいる限りはそんな無教養では許されない』って怒られて。それに言葉遣いだけじゃなくて、この宇宙の森羅万象に関して無教養なことを言うとそりゃあ厳しく詰められるからね。

覚悟しておいた方がいいよ。だから私もこうやって朝からいろんな勉強をしてるんだから。

例えば日本で一番大きい砂丘はどこでしょうか?」

「鳥取砂丘! えっ、いや、待てよ、ひょっとしてこれひっかけ問題ですね。分かった、青森県の猿ヶ森砂丘だ!」

「ブッ、ブー。確かに猿ヶ森砂丘は日本最大規模の砂丘で、鳥取砂丘より大きいと噂されているけど、実際には正確な面積が測定されていないので正解は『分からない』でしたー」

「いや、卑怯でしょ、そんな問題。ちょっと待ってください、ここって朝からそんなことばかりしてるんですか? 

教養係って刑事の実務教養、つまり法令とかインターネット犯罪とか、捜査に関係する知識の講習をするのが仕事と思ってたんですけど」

「それは教養第1・第2係でやってるからね。教3は雑学担当なのよ。ちなみに天蓋さんの前で雑学なんて言ったらキレられるからね。

『雑学というのは学問の膨大さについていけなくて自分の専門分野以外を投げ出してしまった頭の悪い連中が作った言葉だ』って言ってるから」

「雑学……刑事にそんなの必要なんですか?」

「私に言わないでよ。私だって何でこんなところに転属させられたんだろうって思ってるんだから」

高井良は愕然として椅子に座り込んだ。