不意に紛れる一つの黄色い声。襖をピシャリと鳴らしながら現れたのはゆったりとしたワンピースを着た女性だった。
正確にはマタニティウェアでその女性は大きなお腹を慈しむようにさすっている。
「虎ちゃん、まーた若い男の子さらってきたん?」
「なんだ起きてたのか」
「あれだけガサゴソされたら嫌でも起きるわいね。で、その男の子はどしたん。拾ったん?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。チンピラに絡まれたんでちょいと手助けしてやっただけだ。なぁボウズ?」
「え、あ、はい。そうっす」
「ホンマにぃ?虎ちゃんが勘違いしてボコボコにしたんと違うん?」
疑わしげな眼差しを送る女性に竹虎はすっかり参った様子で苦笑し、鬼塚に「嫁だ」と紹介した。
「ウチはボク、名前は?」
「鬼塚大吾っす」
「ダイちゃんね。それよりケガ、大丈夫なん?」
「こんくらい平気っす――イタッ」
「どこが平気なんよ」
強がって言った鬼塚だが桜良が頰に触れた途端に顔をしかめた。
咄嗟のことであまり意識しなかったが、ヒンヤリと心地の良い冷たさを湛えた手だ。
「こっち来んさい。ウチが手当てしちゃるけぇ」
「え、でも……」
「ええからええから。若者は強がらんでええんよ。ほら、はよぅ」
鬼塚は救いを求めるかのように竹虎に視線を送ったが、行ってこいと言わんばかりに顎をしゃくられ、急かす桜良に根負けする形で厚意に甘えることとなった。
次回更新は9月12日(土)、11時の予定です。
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