【前回記事を読む】元の人相が分からないほど殴られていた18歳。助けに入った見知らぬ男から渡された名刺を見ると……
Case:C 娘の選択
すると竹虎は携帯電話を取り出した。機種は分からないが登場して間もないカメラ機能付きのものだった。もちろん鬼塚には縁のない代物である。
「お前、何食いたい? 寿司か、ラーメンか、それとも焼肉か?」
「え?」
「え、じゃねぇよ。何が食いたいかって訊いてんだ。言っとくが牛丼みたいな安上がりなもん頼むんじゃねぇぞ」
意味が分からない。この男は何を思って自分に施しを与えようとしているのか。
何か裏があるのではと警戒して無言を貫く鬼塚に苛立ったのか竹虎は舌打ちをして「寿司でいいな」と言い、それから間を置かずしてどこかに電話を掛け始めた。
「おぉ悪いな。今から握りいけるか?
そうだなぁ、とりあえず四人前で頼むわ。腹空かしたガキンチョがいるんだ。
コイツにたらふく食わしてやりてぇ。事務所じゃなくて俺の家に頼む。
それと、できればでイイんだがバイクじゃなくてチャリか車で配達してくれねぇか。
カブだとうるせぇから嫁が起きちまうかもしれねぇし。
あぁ、助かる。そんじゃ頼んだぜ。
おぅ、ありがとな」
通話を終えた竹虎はひとつ息を吐き、壁にもたれ掛かった。
「ジャケット……汚れますよ」
「ん? あぁ気にすんな、こんなもん。お前は自分の心配でもしてろ。骨は折れてねぇか」
「多分平気っす」
「歩けるか?」
「ウス」
「ならついてこい。すぐ近くに車停めてあっから」