【前回記事を読む】母を生き返らせれば、自分はこの世から消える。それでも女子高生は「残る方法」を聞いた

Case:C 娘の選択

「今日は鬼塚さんと一緒じゃなかったの?」

「葵さんと会う用事があるからと言ったら渋々引き下がってくれましたよ」

「苦労が偲ばれるなぁ……」

「いいんです。あんなデリカシーのない男なんて」

ツンと澄ました雛菊を見て葵は苦笑いを浮かべた。大人びて見える子だが鬼塚が絡むとどこか子どもっぽく、妹のような可愛らしさがある。しかしそんな彼女が突然葵の背後に隠れた。

「えっ、なになに!?」

「すみません葵さん、少しそのままで……」

決して怯えているわけではないものの、特定の人物に見られたくないと思っての行動であることは疑いようがない。葵はそれが誰なのかそれとなく探してみたが答えはすぐに分かった。

前方から雛菊と同じ制服を着た少女たちが歩いてくる。大きな笑い声や化粧、スカートの短さなどからどういうタイプの人間なのかおおよそ理解できた。

しかも驚くべきことに彼女らはすれ違い際に雛菊の足を引っかけたのだ。たまらずバランスを崩したが、どうにか葵が支えたことで転倒することは避けられた。

しかしまくれた袖の下から一瞬ではあるものの意外なモノが目に飛び込む。ビッシリと残ったリストカットの跡。葵は絶句した。

雛菊はすぐに袖を下ろして隠すように反対側の手でギュッと握ったが、顔面蒼白で元から透き通るほど白かった肌からは完全に血の気が引いていた。

さまざまな感情が沸き上がった葵はそもそもの原因を作った少女らをキッと睨みつけた。

「なんでこんなことするの。雛菊ちゃんが何かした?」

「べっつにー?」

リーダー格の少女の後ろで取り巻きたちがクスクスと笑っている。少なくともここに友情など存在しないことは確かだ。

「轟のヤツ、また大人に守ってもらってるよー」

「こわいでちゅねー」

「それでもヤクザの娘かっての。あ、犯罪者の娘かー」