【前回記事を読む】スキーで足を怪我してしまった。歩くこともままならない状態になり、地図とにらめっこして…

第二章 常陸の県境を歩く

2006年から2024年にかけて、銚子から千葉県、栃木県そして福島県の県境を、のべ47日間かけて歩いた記録である。

12 潮来

知人に茨城県を一周するために歩いていると話すと、どうしてなのかと動機を尋ねられることがある。何か大きな目的があるのではないかと、その人は考えるようだ。

だが自分でもよくわからない、というのが正直な思いである。強いて言えば「なんとなく」というゆるい気分で歩いている。

散歩をしていて道が二手に分かれる地点に差し掛かった時に、右に進むか左に行くかを決めるのは、こっちのほうが面白そうだという気分で決めることがあるだろう。

そのような「なんとなく」の気分で歩いていると答えておこう。

内田百閒の『阿房列車』の始まりは「なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて來ようと思ふ」であるが、この『常陸を歩く』では「なんにも用事がないけれど、歩いて常陸を一周してみよう」ということになるか。

なんとなく歩きたくなったから出かけるので、そのため気分が乗らないという理由で急に中止してもなんら支障はない。また何年何月までに歩き通すという自らの期限も決めていない。

朝起きてみて、空を見上げて雨が降りそうなので止めたりしている。まったくずぼらで呆れるが、歩き終えて帰宅したあとに、旅行記のような感想文を書くことだけは真面目に継続している。

今日は常陸の県境歩きの二回目である。今回は下総橘から潮来まで歩いた。

JR下総橘駅には何度も出かけていて、ずいぶんお世話になった駅であるが、帰路は自転車を利用することにして鉄道は利用しないことにした。

このため自転車を潮来に近い十二橋駅にデポ(登山用語で、デポジットの略語、自転車などの移動手段を都合の良いところにあらかじめ置いておくこと)しておいた。

風の強い日であった。利根川に沿って県境を歩く。