【前回の記事を読む】品定めするような視線を向けられ、「小学校の先生ね。春から4年生の担任の…」と当てられた。この町にはさっき着いたばかりなのに…

序章 巡る季節

新米教師

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「あらいやだ、おばさん。からかわないでよ。ああそうだ、この前はごちそうさまでした」

「うちの畑で採れた新鮮なアスパラガスだから美味しかったでしょう」と女は自慢顔である。そうして青山とあけみという車掌の顔をしげしげと交互に見ていたと思ったら、「先生には嫁さんはいないのですか?」と唐突に訊いてきた。ずかずかと人の家に入ってきて、勝手に茶をいれて飲むような質問に青山は驚いた。

「まだ大学を卒業したばかりで、そのようなことは考えてもいません」

「あらまあ、そうでしたか。この町にも良い人がおりますのよ。そのうち紹介しましょう。あけみちゃん、先生のお嫁さんにならないかい?」

車掌のあけみは顔を赤くすると、「おばさん、わたし、しまいには怒るからね」と云って運転席のほうに戻っていった。

バスを降りるまでに結婚相手が決まりそうな勢いである。とんだところに来てしまったのではないかと、青山は再び不安な気持ちになった。

前に座る学帽の中学生は、呆れたような顔をしてバスの後ろで騒いでいる大人たちを見ていたが、カバンの中から少年雑誌を取り出して読み始めた。

バスが二つ目のバス停に停まると、山崎という女と寺門という男は「またお目にかかります、ごめんください」と云って降りていった。