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再びバスが走りだすと、今度は前に座る中学生が近づいてきた。
「先生、怒らないでください。山崎のおばさんも、寺門のおじさんも悪意があったわけではないのです。ただ先生と話をしたかっただけなのです。このあたりには人懐っこい人が多いんです。僕はそういう人は嫌いではありません」
なんとませた中学生であることか。青山はこれにも驚いた。
「君は寺門さんのむすこさんと同級生なのかな」
「はい、そうです。寺門豪太(ごうた)は僕の同級生です。彼はやんちゃなところがありますが、正義感の強い良い男です」
生真面目な顔をして、青山の眼をのぞき込むように話すので、少々きみが悪くなった。
「君の名前はなんて云うのかな」
「僕の名前は寺山(てらやま)修二(しゅうじ)と云います。詩人の寺山修司と同姓同名ではありません。『しゅうじ』の『じ』が違います。一字の違いですが、僕は同じ名前をつけてくれた父ばかりでなく、寺山修司も尊敬しています。僕も寺山修司のような詩を書きたいと思っています。それでは失礼いたします」
寺山修二は自分の席に戻って、再び少年雑誌を読みだした。