【前回の記事を読む】「先生、怒らないでください」妙に大人びた中学生の言葉に新米教師は薄気味悪さを覚え……
序章 巡る季節
新米教師
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校長室に入ると、机に向かって書き物をしていた、いかにも校長然とした赤ら顔の人物が顔を上げた。
「校長先生、青山先生をお連れしました」
「これは青山先生、遠路ごくろうさまです。校長の佐山藤十郎(さやまとうじゅうろう)です。このような若い先生に来ていただけるのは本校にとって望外の幸せであります。この小学校の児童たちにも喜ばしいかぎりです」
「青山純です、よろしくお願いいたします。右も左もわからない新米教師ですが、どうぞご指導願います」
「そのようにかしこまらなくても結構ですよ。誰でも最初は新米でありまして、わたしにもそのようなときがありましたが、それは気の遠くなるほど昔のことでありまして、今ではカビの生えた古米先生になってしまいました」
佐山校長は笑顔で話しているがその眼は鋭く、まるで青山の性格を一刻も早く把握しようとしているかのようだ。
教頭が校長の机の前に椅子を用意してくれたので、軽く会釈をしてそれに座った。
「本校はこの町でたった一つの小学校ですが歴史は古く、明治時代に開校した由緒ある学校です。かの有名な高石高蔵(たかいしこうぞう)先生は本校の卒業生です。高石先生はご存じですよね」
「申し訳ありません、存じ上げません」
この会話を聞いていた教頭はすかさず、「高石先生は代議士でありまして、このあたりの地域の発展に日夜尽力されている方であります。国会が終わって帰省されると必ず本校に寄ってくれます」と会話に入ってきた。
当の青山は「はあ、そうですか」としか云えなかったが、教頭は如才なく世渡りしてきたという印象をもった。