「ところで校長、新学期からのことをお話しされたほうがよろしいかと存じますが」

「そうでした、青山先生には四年生を担任していただくことにしました。こゝは田舎町なので都会にいるような資産家はいません。ほとんどの児童は一般的な家庭の子どもたちでありまして、どの子も元気だけが取り柄というところです。最初は自然児に手をやくことがあるかもしれませんが、それもある程度時間がたてば慣れてきます」

四年生の担任になることについては、こゝに来るときのバスの中で知らされていたが、山崎延子の母親から情報が漏れていたことを公言することになるので、青山はもう知っていますとも云えなかった。

校長は学校の歴史と行事について説明を始めた。滔々(とうとう)とした話を最初は熱心に聞いていたが、いつまでたっても終わる様子がないので青山は眠気に襲われてきて困ってしまった。

横にいる教頭の顔を見たら、校長の話をまったく聞いていないことがすぐにわかった。

「このように本校は歴史のある小学校であります。長々とお話しさせていただきましたが、ご退屈ではなかったですか」

青山の感情がわかっていながら、新人教師には云いたいことだけは云っておこうというところなのであろう。

これ以上退屈な話を聞かされないように青山は話題を変えることにした。

「少し相談させていただきたいことがあるのですが。自宅から小学校まで毎日電車で通うのも大変なので、このあたりには下宿できるような家はあるでしょうか」

「それなら良いところがある、この後は何もやることはないので一緒に行ってあげましょう」と、脇から教頭が云った。

右も左もわからない土地なので、青山は素直に教頭の親切に従うことにした。