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草太(そうた)はこの春から小学四年生になる。同級生の哲男(てつお)と小学校近くの空き地で自転車に乗って遊んでいた。
「おい哲男、あれを見ろよ。学校に男の人が入っていくぞ」
草太が指差す小学校の玄関前にある築山の前を、一人の男が歩いているのを認めると、哲男は「新しい先生かな」と首をかしげた。
「教頭先生が出てきたからきっとそうだ。行ってみよう」
二人は自転車を降りると小走りに運動場を横切り、職員室の窓の下で隠れるように腰をかがめて中の様子をうかがった。
教頭先生とその若い男が職員室を出ていくと、大崎先生と菊池先生は笑いながら何か話をしていた。
「大崎先生に聞いてみようか」と、哲男が窓ガラスを叩いて二人の先生においでおいでの手を振った。
菊池先生がやってきてガラス窓を開けた。
「こら哲男、そんなところで何をしている。なんだ、草太も一緒か」
「先生、あの男の人は新しい先生か? 俺たちの担任になる先生か?」
菊池先生は笑いながら、「あゝそうだ、青山純という名前の先生だ。お前たちのクラスを担任する先生になる。大学を出たばかりの若い先生だから、あまり困らせるなよ」と云った。
「なんだ、ひよこ先生か」と、哲男はおどけてみせた。
「お前ら遊んでばかりいないで、少しは家の手伝いをしなさい。哲男の母ちゃんは、家の手伝いをなんにもしないで遊んでばかりいて困っていると話していたぞ」
これを聞くと、草太と哲男は逃げるように運動場に向けて駆け出した。
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