「54番の方、診察室にどうぞ」
診察室に入ると、そこには美しい女医さんが笑顔で待っていた。
「そうですか。それは大変でしたね。嫌な思いをしてさぞおつらかったでしょう」
増田千晶という女医は決まり文句を言った。
「私、魚なんて盗んでいません。それなのに店長は私のことを最初から疑ってかかっているんです」
「もちろんそうでしょう。でも、あなたの心の状態を考えると、やはりしばらく仕事は休まれた方がいいかと思います」
「どうしてですか? 私は何も悪いことはしていないのに。私がずっと休んでいると、あの人たちはきっと、やっぱり魚を盗んだから店に来られないんだって曲解するに決まっています」
「うーん、めんどくさいな。だったらもう辞めちゃえば?」
「は? どういうことですか?」
「魚を盗んだのが誰か知りませんけど、その人が捕まるまではあなたは疑われ続けるし、あなたはそれで心を病んでしまうわけでしょ。
だいたい、そんなことで部下や同僚を疑うような職場なんかにずっと勤務しないといけない義務なんてないでしょう?」
「それは先生が恵まれた立場だから言えるんです。私はあの店を追い出されたらもうどこにも行き場がないんです」
「そんなことないでしょ?」
「え……?」
次回更新は9月5日(月)、21時の予定です。
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