【前回の記事を読む】愛犬が死んだ。タオルに包まれた体に、たむけの花を散らした。その短い脚では、虹の橋を渡るのも大変だろう。もう抱っこはしてあげられないからね。

第三走者 吟(ラブラドール・レトリバー) 平成十四年~平成三十年

もにょもにょ

人間に出会いがあるように、犬にも出会うだけの運命があった。

九月、黒ラブの子犬が産まれそうだという。夫の友人のエーイチさんのところでは、黒ラブをつがいで飼っていた。

ラブラドール・レトリーバーは盲導犬にもなる、とても賢い忍耐強い犬種。大型犬であっても、おとなしく人懐こいという。

絶対に見に行くまいと思っていたのに、生まれたと聞いた途端、子犬を見にすっ飛んでいった。

生まれた九匹の子犬は、イエローが二匹、残りは黒で、もにょもにょ動き回っている。

どれもかわいい毛玉でしかない。

「三匹、何とかしてくれよ」

夫はエーイチさんに、そう頼まれていたのだった。

一週間ほどして再び見に行くと、どの子もみんなかわいらしく、元気いっぱいだ。特にもにょもにょ動くうちの、黒くて鼻筋の整ったオスを一匹、我が家で受け入れることにした。

名前は、飼う以前から決まっている。

「吟(ギン)」

ダックスフントの醸の名前がついたときから、次にくるペットは猫だろうが犬だろうが、ハムスターだろうが、吟、その次は、大。三匹そろえば「大吟醸」というわけである。

さらに続くなら、「純米大吟醸」かなどと、造り酒屋ならではの名前が用意されていた。 黒いメス二匹が、私の姉の家と、最近ハスキー犬を亡くしたばかりの友人のところへ嫁入りした。

これで三匹のノルマ達成。

こうして初めて飼う犬種の黒ラブの吟が、家族の一員になった。