【前回の記事を読む】コミュニティイベントに参加した母は「自分とは違う」と他の高齢者を拒絶…次も参加してみるよう勧めたが、母はなぜか終始歯切れが悪く……
第1章 違和感
母の孤立
「もうあんなところ行かないわよ! しかも、わざわざ家まで押しかけてきて!」
高齢者向けのイベントがあった日の夜、妻がいつもの安否確認の電話をした時のことだ。
母はどうやらその日のイベントに参加しなかったようだ。
それを心配してくれたコミュニティセンターの担当者が、母の家までわざわざ様子を見に来てくれたのだという。
「お母さんのことを心配してくれてるのに、なんでそんなこと言うの? お父さんからの依頼もあって、お母さんを気にかけてくれているんだよ」
妻は火に油を注がないように落ち着いた口調で言うが、人様の好意を踏みにじり迷惑をかけてしまった母への、娘としての怒りが言葉の端々に見える。
それに対して母もすかさず反論する。
「私がどうしようと私の勝手じゃない! 担当の人も良くないわよ。なんでこうズカズカ入ってくるのかしら。だから女の人って嫌よ!」
このイベント担当者は女性で、ベテランな雰囲気を持つ方だった。これまでの経験から、母のためを思っての行動であったことは言うまでもない。
一連のやり取りの後、妻は深いため息とともに電話を切った。自分勝手とも思える理由で、亡き父の気持ちを汲んでくれた担当者の親切を無下にするなんて。妻のやるせなさとやり場のない怒りが伝わる。
「お母さんって、こんな人だったっけ……」