【前回の記事を読む】十分な生活費を渡している母から「お金がない」と電話が…通帳残高はわずか数百円、さらに亡き父が「もしもの時に」と遺したお金まで消えていて…

第2章 壊れていく日常

覚悟

母は認知症の進行で怒りっぽくなり、コミュニティに入らず、料理と掃除と買い物ができなくなり、洋服がいつも同じで、私たちが買ってきた食材や妻の大事な衣類を廃棄した。

父や私たちに対する血縁認知も希薄化し、最終的には生活の基盤となるお金の管理もできなくなった。

こんな状況では母がどれだけ一人暮らしを希望しても不可能に近い。

母に今の生活を諦めさせ、母と一緒に暮らすか、ホームに入れるか決断せざるを得ない日が迫っていた。

私たちは、母のできなくなったことを整理し、母に丁寧に伝え、その上で母の考えを求めようと試みた。

具体的には、今の現状から母自身がどういう改善を加えれば一人暮らしを継続できると思えるか、母の口から案を出してもらうことだ。

大層な改善案を期待しているわけではない。お金の管理が難しいなら、レシートを必ず受け取りテーブルのケースに入れる、というようなことを母自身の口から言ってくれることを期待した。

実は、母がお金の管理ができなくなったとわかった直後に、私たちはこれと同じことを母にお願いしたのだが、母はできなかった。

ならば母自身の口から言ってもらえれば、母の行動も変わるかもしれないと一縷の望みをかけた。レシートさえあればお金の流れが追え、おかしな点を私たちがこまめにサポートすることで、母が希望する一人暮らしはなんとか成立すると思ったのだ。