【前回の記事を読む】父の三回忌、母を連れて墓参りへ…何十年も連れ添った夫の墓を前に「ほら、お父さんだよ」と声をかけると、母は「あぁ……はい」としか答えず…
第2章 壊れていく日常
消えたお金
私は学生時代から結婚するまでは一人暮らしをしていたため、母一人にかかる食費、光熱費、通信費、薬代などの生活費はおおよそ想像がつく。ここに家の固定資産税を毎月按分した金額をのせる。これが毎月のおおよその支出額だ。
これに対して、父の遺族年金も含む年金に加え、私たちの稼いだお金を足して月々手渡していた。
母が月々手にする額は私が算出した毎月の支出額の二倍弱で、一般的な生活費よりかなり多い。
これは、母が父を亡くしたショックから少しでも早く立ち直り、お出かけや習い事などをするにも不自由があってはいけないと思って決めた額である。そして、母が一人暮らしを始めた頃には、母の手元に充分余る額であることは確認済みであった。
父の闘病費用がかなりかかったため、母の口座には貯蓄がほぼなかった。
私たちにも生活があり、毎日汗水垂らして働いて得た給料の一部を母の生活費に充てることには苦い思いももちろんある。
とはいえ母が選択した一人暮らしに協力したい気持ちのほうが大きかった。
そんな思いの乗ったお金が母に何の恩恵も与えることなく消えていると思うと胸が締めつけられるような気分になった。
この電話の後、私はすぐに母の生活費を計算し直してみた。
やはり、充分余る結果だ。仮に想定以上に医療費がかかっていたとしても新聞が取れないほど生活費が苦しくなることはあり得ない。
何かがおかしい。
とはいえ、母の手元にお金がないということは、私たちが母の家に食材を持っていける休日まで母は食べ物を買えないことになる。
すぐに車に乗り込み片道小一時間かかる母の家に行き、数日分の生活費を渡した。
一応、妻が母のお財布を確認してみたが、細かい小銭しか入っていなかった。
もう夜も遅く、明日も朝から仕事だ。生活費を詳しく調べるのは、数日後の土曜日にすることとした。