【前回記事を読む】「せめて、若菜だけは…」火の手が迫る中、防塵マスクを外して孫娘の口元へ…祖父が守りたかった娘は、その後——
Case:B 元・医者の選択 結
二〇一九年
「まぁ、お父さんみたいなこと言うな、この人……って思う時もあるけど」
「葵はお父さんいないもんね。男を見る目がちゃんと養われてるか不安だよ、アタシャ。最近、他のことにお熱になってるっぽいし」
ギクリとした。死神のことはもちろん課長とだけの秘密にしているが、普段から仕事そっちのけで命のやり取りについて考えることが増えているから。
「ひょっとして男か……? もしかして今覗いてるサイトも婚活サイトだったり?」
「なわけないでしょ」
「じゃあ見せてみなさいよー」
「あ、コラやめろぉ」
「んー? 死神の正体? 死神って例の都市伝説の?」
「まぁ、うん……」
加藤は目をパチクリとさせたかと思うと一拍置いてカラカラと笑い始めた。
「笑いすぎ……」
「ごめんごめん。いやぁ、だってさぁ。そんなに深刻そうな顔して調べる内容じゃないもん。所詮都市伝説でしょー?」
「そうなんだけどさぁ。あー、もういいや。なんかアホらしくなってきた」
「そーそー。とっとと仕事モードに切り替えて定時で終わらそ。んで、呑みに行くべ」
「い・や」
唇を尖らせてブーブー言う加藤を無視して葵はウィンドウを閉じようとした。ただ、×ボタンを押す寸前にとある書き込みが目に入って人差し指が硬直する。
葵は数秒間、まばたきもせずにその回答を見つめ続けた。
『その死神、私も知ってるかもしれません』