「元々、数学の力はあるじゃん。どうして俺と知り合うまで数学が苦手だったのか、不思議の国の有栖川さんだ」

そう言うと、

「なにそれ? 有栖川? だっさ。先生、もう、おっさんの域だね」

「そういう陽葵ちゃんだって、鉛筆を鼻と上唇で挟んでいるクセが前世代的だよ」

「うるせー」

陽葵はわざと砕けて話す。

「なんだか賑やかですね」

お茶とお菓子を持って、お母さんが入ってきた。

ちょっとかしこまって

「すみません。勉強の貴重な時間を雑談に使ってしまいました」

「いえいえ、いいんですよ。なんだか最近、陽葵は数学を勉強するのが楽しいみたいなんですよ」

「それはよかった。楽しみは増やさないとね。じゃあ今日からもっと宿題増やすね」

「もう、お母さんがそんなこと言うからこんなことになったじゃん」

口をとんがらせて陽葵は言うが、まんざらでもないようだ。

お母さんも、宿題大歓迎と右手の親指を立てる。

「陽葵はね、母親の私から言うのも変ですけど、勉強は好きな子なんですよ。英語・国語はいい成績を維持しています。でも数学が不得意なことが心の重しになっていたみたいで、定期テストで数学が思うように解けないと、理科や社会にも影響してたんですよ」

そうか、陽葵は完璧主義なのだ。だから、ひとつでも不得意科目があると、他の教科で巻き返そうにも、気持ちを引きずってしまうのだろう。

明るく見えても、あぁ数学が脚引っ張っちゃった。次の科目もダメかもしれない。——そんなネガティブな思考が頭を巡るのだろう。

さて、どうしたものか。どう言えば心の重しを取ってあげられるだろうか。考えがまとまらない。

お母さんが続ける。