「なあ、鍬下、本当にその神撰って奴らが来ると思うか?」
警視庁の窓のブラインドの隙間から厳戒態勢の国会議事堂を眺めながら小川が言った。
「普通のテロリストならこれだけ警戒されたら断念すると思いますが、あの時の青竜は自信満々でした。僕は奴らが強行する可能性はあると思います」
「でも国会は休会中だし、この警備の中を突入しようとしてもすぐ潰されるのが関の山だぞ。俺はただの脅しなんじゃないかと思うけどな。でも一々、そんなこけおどしのためにこれだけの人数が休日に割かれるんじゃ、警備部もご苦労さんだよな」
「はあ」
その時、鍬下の頭の中に耳鳴りが突然鳴り響き、彼は思わず両手で頭を押さえた。
――鍬下、頼みがある。
「賽子さん? こ、これってテレパシーですか?」
「は? どうした?」
小川が驚いて鍬下を見つめた。
――バナナが神撰に誘拐された。車を出してほしい。
「えっ! 那花さんが? 分かりました」
「えっ? おまえ、イヤホンで会話してんの?」
小川が鍬下の両耳を覗き込んでいる。
「すみません。小川さん、ちょっと出てきます」
鍬下は慌てて身支度を整え始めた。
「おい、どこに行くんだ? おい!」
小川が引き留めるのも聞かずに鍬下は部屋を飛び出した。
「あいつ、死にかけてから頭がおかしくなったんじゃないだろうな」
その時、上空から大きなローター音が鳴り響いてきた。
ブラインドの隙間から覗くと、国会議事堂の上空から1機のオスプレイが前庭に着陸しようと降下しているところだった。
「何だ、あれ?」
小川は眉間に皺を寄せながら呟いた。
同じ頃、議事堂周辺で警備していた警察官たちも降下するオスプレイを見上げて慌てふためいていた。
「おい、これ、自衛隊機か?」
「自衛隊の応援なんて聞いてないぞ」
「自衛隊からの連絡なんてない。まさか、これがテロリストか?」
「防空指令所は何をしてたんだ!?」
次回更新は7月16日(木)、21時の予定です。
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