【前回の記事を読む】「お預かりします」お母さんからバトンタッチした私は、席に着くまでそっと手を離さなかった…離した途端、彼女はやっぱり……
第二章 熟慮の決断
三つ子の魂
手指、脚の感覚訓練
ハサミを見せた時、初めは何をするもの?と言わんばかりに閉じた刃の方を握り、輪っかに指を入れることも嫌がった。
やがてハサミの輪っかに指を通すことに抵抗しなくなった。輪っかに入れた指を抜かせないように手を添える。そこからがスタッフの出番だ。
輪っかに指を通した彼女の手を上からそっと包み込む。そして二人羽織の要領で手を重ね、まるで吸盤が付いているようにそのまま手を開いたり閉じたりさせながら、紙を切り進んでいく。彼女は珍しいものでも見るようにじっと手元を見つめている。
そこから包み込むようにしていた吸盤の手を少しずつ浮かして、彼女自身が自力でグーパーグーパーができるようにしていく。
ピクリともしなかった指に少し力が入ってきて紙を切りそうになると、介助のスタッフは励ましに力が入る。
「チョッキン! チョッキン! エイッ!」
チョッキンと切り落とせた時は、スタッフの方が達成感で感激する。
彼女は手先の不器用さは否めないものの、鉛筆と白紙を持たせれば、何やら熱心にぐるぐる書きなぐるようになり、ハサミはジグザグながら切り進むことができるようになった。