両親の熟慮の部屋改築
どこに行くにも目が離せないほど多動だった彼女にも就学相談の時期が来た。そんな時お母さんがふと漏らした。
理由をつけて就学を一年遅らせてもらおうかなと思っている、と。
私はそれとなく反対し、「一年遅らせれば今の彼女の状態が改善していくとは思うけど、むしろ入学させて環境が変わる方が昇格したという自覚が出て精神面が成長すると思いますよ」と、さりげなく言った。
いい加減なことを言っているように思われるかもしれないが、経験上確信していることでもある。
彼らは言葉もなく行動も幼稚なので、小学校に上がることが“昇格”などと分かるはずがないと思われがちだ。ところが彼らも小学校は昇格だと感じていて期待もしている。
お母さんが私の話を信じたかどうかは分からなかったが、一年入学を遅らせる話はなくなった。
お父さんとお母さんは彼女の将来のことまで真剣に話し合っているようだった。
下に妹と弟がいる。長女にばかりかかりきりになってはいられない。目を離していても彼女の安全を確保するにはどうすべきか、知恵を絞ったようだ。
その結果、家を大改造することにしたそうだ。
お母さんが台所に入っている時でも彼女が台所に入って悪戯(いたずら)しないように、しかし彼女がどこで何をしているのか、お母さんから見えるように、間仕切りやドアではなくすべてを格子戸に変えるという設計にしたそうだ。私は心の中で拍手した。
そうなのだ! 自閉症児を抱えた家は子どもの困る行動を嘆いている場合ではないのだ。
どうしたら解決・改善できるのか、アイデア・工夫を絞り出して家族全員がストレスなく暮らすことが大切だ。
お父さんも彼女の療育に熱心だった。両親の決断、実行力、愛情にただただ感服するのみだった。
次回更新は7月6日(月)、14時の予定です。
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