言いたいことだけを言って気が済んだのか、父はサイドラックに手を伸ばして、しわくちゃになった新聞をもう一度広げた。

「お話が済んだのなら、いらっしゃい」

絶妙なタイミングで母が呼んだ。耳を澄ませていたみたいだ。ちらりと父の顔色を窺うと、数ミリだけあごが動いた。頷いたつもりだろう。

「お父さん、その前に聞いていい?」

「ん、なんだ?」

「もしも、もしもだよ」

「うん」

「お母さんもわたしもいなくなって、独りぼっちになったらどうする?」

「縁起でもないことを。あの超健康的な母さんと、超能天気なお前が先に逝くわけがなかろう。くだらないことを言うんじゃない」

次回更新は7月10日(金)、11時の予定です。

 

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