【前回の記事を読む】どうしてこれほど真剣なのか、何かを画策しようとしているのか――。倒産寸前の会社を“拾う神”は、銀行の中から現れた。
第1章 債権者集会
債権者集会
「金の流失とは何ですか」
「本業以外のことに金が流れていなかったか、ということだ。
使途不明金や不明瞭な金の動きなどの調査ではなかったか。また、闇金との取引はなかったかも調査したと思うよ。
接待交際費などは詳細に見たかもしれないな。交際費の中に思わぬ悪事が隠されていることがあるからな」
「その公認会計士の調査の内容をその弁護士は聞いていたということでしょうか」
「詳細については、ともかくとしてイエス、ノーのレベルでの話はあったのではないですか」
「なるほど、弁護士も何か確証がなければ言えませんからね。そうでしょう」
「というような訳で、免除率を90%に上げようと思っていますが、何か意見はないですか」と、松葉が言うと、二人は顔を見合わせにっこり微笑んで言った。
「それだったら助かりますね。必ず再建はできます。なぁ、常務」
「いや! ありがたいですね。まるで蜘蛛の糸がするすると降りてきたような話ですね」
「常務、『蜘蛛の糸』を読んだことがあるのか」
仙田が茶化すかのように聞くと、常務は真顔で、「祖母が信心深い人で、読んでみたら、と言われて読みました」
「そうか、おばあさんはきっと立派な方だったな。常務もその血を引いて思いやりがあるよな」
竹之下は、頭を掻いてはにかんだ。
「常務、その糸に繋がってくる人のためにも、その糸を切られないように『恕(じょ)のこころ』を持ってみんなで力を合わせて頑張ろう」
「恕のこころ? ですか」
「そうだ、『恕のこころ』だ。自分だけが良ければ良い、という今の風潮を断ち切り、わが社のことだけにこだわらず、将来に向けて頑張ろう、ということを社長は言われたのだよ。ある意味、わが社は民事再生法の試金石となるかもしれない」
仙田が、竹之下を諭すように言った。二人の感謝に満ちた安堵の顔を見て、松葉は心の中で改めて野津に感謝した。