債権者集会の日がやって来た。市の福祉会館大ホールを借りて、午前10時から行われた。200人ほどの債権者が集まった。
債権者の殆どの人が、松葉の古くからの知り合いの人たちだった。控室のドアの隙間から来場者の顔が見えた。
出て行って、一人ひとりにお詫びを申し上げたかったが、どんな顔をして挨拶して良いかも分からない。躊躇しているのが、自分にもよく分かった。足が動かない。定刻になってしまった。
松葉は、意を決して部屋から出て、前に用意された椅子にうつむいたまま一礼して座った。
司会者が、「社長の松葉よりお詫びと今回の民事再生の申立に至った経緯そして再生計画について、説明をさせて頂きます」
と言った。松葉は、マイクの前で深々と頭を下げ、「ご迷惑をお掛けしました」と冒頭お詫びした。
そして、経緯と再生計画について説明した。
「栃木県に建設した関東工場の操業がプラントメーカーの倒産によって1年ほど遅れ、代わりのメーカーに窓口商社が残工事を別のメーカーに依頼したが、プラントが正常に動かず操業が遅れ、そこにバブル崩壊に伴う金融引き締めのためか融資が滞り、今回の事態を招いてしまいました。
ついては今後はグループ会社7社を3社に統廃合し、お手元にお配りしました再建計画に従いまして再建を果たさせて頂きたいと考えております」
7社を3社に統廃合するということは、アルミ鋳物を材料とする建築資材の製造会社とその販売をする会社を統合、そして貿易会社を吸収して松葉工業1社に、鋼板を材料とする屋根材の製造会社とその販売会社を松葉鋼板という会社1社に、建設の会社とローコストマンション建設のコンサルタントの会社を統合して3社にするというものだった。
続けて、弁済計画について説明をした。
「50万円未満の再生債務につきましては全額支払いをさせて頂きます。しかし、50万円以上の債権者については、誠に申し訳ございませんが90%の免除を頂き、向こう10年間の均等弁済とさせて頂きたい」
とお願いした。
松葉の説明は、開き直りとも感じられるほどに淡々としたものだった。それは、松葉の覚悟がそうさせたに違いない。
松葉の隣に座っている専務と常務は目を見開いて債権者の一人ひとりを凝視していた。松葉の説明が終わり、質疑応答の時間となって、司会者が債権者に質疑を促したが、静まり返ったまま、誰も挙手するものはいなかった。
司会者が、質疑がないようですので、民事再生についての賛否を投票して頂きます、と告げた時、松葉工業の下請けをしていた社長が、すみません、よろしいですか、と挙手した。
「今回の事態になって驚いています。その原因が関東工場のプラントメーカーの倒産に起因したということも、またそれに伴い金融引き締めに遭ったということも分かりました。
そこで、質問ですが、会長さんの支援は得られなかったのでしょうか」
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