ごほん、とひとつ咳をすると、父はローテーブルにあった湯吞を手に取った。
「お上がそういう教育方針を採用している以上仕方あるまい――で、どうだったんだ」
「何が?」
「面接だ」
うわ、いきなりか。本流に戻された。枝道へ迷い込んだと思っていたのは、どうやらわたしだけだったみたいだ。
「だ、だから、ぼちぼちです」
「阿呆。受け答えはきちんとできたのか?」
「そう言われたら、自信ないかも。だけど、あがり症の人だっているし、あれで何がわかるのよ」
「お前が真面目ないい子だってことは、父さんは知っているよ。しかし、相手の面接官はお前という人間を知らない。学校でどれだけ頑張って良い成績を残したか、それしか判断する材料がない」
「それは、わかるけど。勉強で頑張れた人は、会社でも頑張ってくれるだろうってことでしょ。だけど、本当にそうかしら。そんなのわかんないじゃん」
「そのために面接があるんだ」
父の言うことは正しいと思う。しかも理路整然としていて、異議をさしはさむ余地がない。でも、整然といかないのが人生だ。普段はパッとしないわたしだけど、社会に出た途端能力が開花して、重宝される人材になれるってこともある――根拠はないけど。
「面接は、今日ので何件目だ?」
「うーん――ラッキーセブンかな」
「吞気な奴だ。とにかく、就職浪人なんてみっともないことだけは勘弁してくれよ」
「わたしだってしたくないよ、そんなの」
「それから一つだけ言っとくが、社会に出ても勉強がなくなることはないぞ。それだけは覚えておけよ」