【前回の記事を読む】その日、様子がおかしかった…庭の大きな石に座って、足先で砂を蹴っている。回数は次第に増えていき、ついに…
第3章
おそろしい台風
その年の秋(あき)のある日のこと、島をおそろしい台風(たいふう)がおそった。ここは南の島だから、毎年(まいとし)台風のとおり道サ。でも今度のはいつもとちがう。
大風(おおかぜ)がゴーゴーとうなり声(ごえ)をあげて吹(ふ)き荒(あ)れ、バナナやパパイヤの木を、狂ったようにおそってはしめ上げ、稲穂(いなほ)みたいにわっさわっさとゆらした。
大雨がどーっと滝(たき)のように空から落ちてきて、島中(しまじゅう)のものを流してしまいそうだった。
わんはもうこわくてこわくて、家(いえ)の高(たか)いところのすき間に入りこんでじーっとしていたよ。ケーケ、ケーケ……
その日の夕ご飯のあと、チーグは不安そうに窓辺にすわって前の道路(どうろ)を見てる。どーっと降(ふ)った雨が集(あつ)まり、がわがわと流れて道路は川のようだ。
家と道路との境にある石垣に、流れる水がぶつかり、はねあがってしぶきが飛びちっている。
「おかあさん、こんな時はヤモリも鳴かないね」
チーホが、早めに布団(ふとん)を敷(し)いた上に座って、窓の外を見ながら振り向くと、おとうさんとおかあさんが外を見ながらなにか話し合っている。
おとうさんがとうとう心を決(き)めたように言った。
「チーホ、おとうさんとおかあさんはやっぱり畑に行ってくる。このままではパッションが全滅(ぜんめつ)だ。なんとかしなければ。チーホはチーグといっしょに留守番していなさい。ミーニョをたのんだよ」
おかあさんまで、「こんな時は、おとうさん一人ではたいへんよ。少しでも手伝いが必要(ひつよう)だわ」と、でかける準備(じゅんび)を始(はじ)めたじゃないか。
「ええっ? だってこんなに風がひどいよ!」
「雨もひどいよ!」
聞いていたチーグもいそいで言った。