はじまりの章
三角定規(さんかくじょうぎ)の島(しま)
みなさんは、日本の南のはしっこに、大きな島(しま)や小さな島がたくさん並(なら)んでいる南西諸島(なんせいしょとう)というのがあるのを知(し)っている? その中で一番大きな島は、みんながよく知っている沖縄(おきなわ)だよね。
そしてその次(つぎ)くらいに大きな島が、このお話の島だ。この南の島は三角定規みたいな形をしている。その細(ほそ)くとんがったあたりに小さな空港(くうこう)があって、そのまた近くのソテツの森(もり)のかげにね、トポリという、静(しず)かな美(うつく)しい浜辺(はまべ)があるんだ。ケケ……

このお話はその村で生(う)まれた三人娘(むすめ)のお話なんだ。ケケ……あ、失礼(しつれい)、ついケケって言うくせが出てしまった。
わんは、えーと島口(しまぐち)、つまり島の言葉(ことば)で、私(わたし)のことをこう言うの。わんは、この島に住むケンムンっていう妖怪(ようかい)。妖怪っていっても自分ではこわくないと思ってるよ。
でも、けっこうみんなからはこわがられてる。山でホーイホーイというおそろしい吠(ほ)え声を聞(き)いたとか言われて、ちょっとさびしいサ。ま、いたずらするの好(す)きだしね。姿(すがた)がみなさんとはちょっとちがうからね。
昔(むかし)から、イヌみたいだの、サルみたいだの、カッパみたいだの、って言われているんだ。ガジュマルの木に住(す)んでいて、いつもここやあそこにいるけど、誰(だれ)も気がつかないのさ。ケケケケ……