【前回の記事を読む】四月のある朝、チーホは空をながめていた――シュークリームのような形だった雲は、だんだんちがう形になり...
第2章
夢(ゆめみ)見るチーホとハブ
チーホがふと横(よこ)を見ると、向こうの草むらと茂(しげ)みの境(さかい)目から太いひものようなものが、少しはみ出して落ちていた。
「あれ? この前なくしたヘアゴムかな?」ふと手を出して、ギョッとした。それが少しぷるぷると動いたんだ。チーホは驚(おどろ)いて体が固まってしまった。
「チーホ、どうした?」おとうさんがチーホの様子が変(へん)なのに気づいて声をかけた。
そのとたん、
「ハブだ! チーホ、動くな!」とさけんで、チーホが見つめている先の草むらをめがけて、そばにあった長い柄(え)の鉈(なた)をドスンと振りおろした。おかあさんがチーホをばっと抱(だ)き寄せた。チーグはいそいでおとうさんの背中(せなか)の陰(かげ)にかくれた。
みんながおそるおそる見ると、ハブはそこにはいなかった。どうやらとっくに逃(に)げたようだった。ケケ。おかあさんは震(ふる)える手でチーホを離(はな)さない。チーグもおとうさんにすがった。
「ふうーっ……、三千円、逃がしたな」おとうさんが言ったので、みんなはやっと笑った。この島ではハブをつかまえて届(とど)けた人は役場から三千円がもらえることになっているんだ。ケーケケケ。

張り切るチーグとカラスの子
五月になるとおとうさんとおかあさんの畑は一気(いっき)に忙(いそが)しくなるんだ。チーホはもちろん、一年生になったチーグもお手伝いに来(き)てる。チーグは小学生になったら急にしっかり者(もの)になったみたいだ。チーグのきょうのお手伝いはカラスの番人(ばんにん)だ。
この時期(じき)はカラスも子育(こそだ)てをするんだ。でもカラスは畑では困(こま)り者だ。パッションフルーツの隣(となり)の畑にまいた豆(まめ)の種を、みんなやられたこともある。わんも昼寝(ひるね)をしていた時、頭の毛をむしられたさあ。なにも悪(わる)いことしてないのにい。ケーケ。