生きる力のすごさ
一泊二日の幼児夏合宿の団体は、翌日バスと電車を乗り継ぎ、解散駅に集まった家族に表面上は元気に挨拶し、迎えの親御さんに子どもをお渡しした。
私とスタッフはこばとに戻り、子ども一人一人の合宿の記録を書いて郵送する準備をした。
私の気持ちの中では合宿終了の達成感というより、怪我をさせたという悪夢が続いていた。
合宿の残務処理が一段落した日、お詫びのために彼の家を訪問した。
お母さんが出迎えてくれた。予想外にお母さんは明るく、非難する言葉はなかった。
大きい病院で精密検査をしてもらったが何も異常はなかった、と笑顔で話してくれた。
彼も元気に庭で遊んでいた。胸のつかえが取れてほっとしたが、それでも後になって後遺症が出るのではないかと気になったので、それから一週間ほどしてまた彼の家に電話をかけた。
お母さんが出て、なんと家族旅行に行ってきた、と言うではないか。私は後遺症が何もなくて良かった、とだけ言って電話を置いた。
本当はちょっと啞然とした。心配していた自分が馬鹿みたいに思ったが、それはこばとにとっても幸運なことだったのだと思い直した。
カフェテーブル事故が大怪我になっていたら、あと少し逸れて盆の窪ではなく打ち所が悪かったらと思うとぞっとする。
そうなったらこばとは二度と幼児夏合宿はできなくなっただろうし、評判を落とし、その後のこばとの存続さえ危うかっただろう。
それにしても髪の上から文具のホチキスに似た医療用器具で縫合して傷口が治ってしまうとは。
子どもの生きる力の大きさに驚いた。
人間は生物としての生きる力を、本当はまだまだ持っているのだと思わされた。
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