「有り難くいただく」
「へい」
「秀次殿、今後ともよしなに頼む」
「へい」
それが、秀次と石動の最後の会話となった。
四
「おやまあ。お神酒でございますか」
「うむ」
石動は酒に強い。
飲んでも乱れないし、二日酔いをした事もない。なければないでもかまわない。
毎日二合の晩酌、その習慣もあの事件で途絶え、そして旅の中で再び始まった。伊勢神宮を参った後の旅の宿で、膳に徳利が一本ついていた。
「父上。精進落としと申します」
五月がそう言って酒を進めてきた。
父が酒を口にしなくなったのは家族への申し訳なさから、そう思った五月が頼んだ一本だった。
「あー、うむ」
久し振りの酒は、やはりうまかった。
そういえばあの日、家に帰ってから「酒は要らぬ」そう言った。上意の使者と会う時に酒気を帯びていては不敬となる。そう思ったからなのだが、「今日(きょう)は」を言い忘れた。
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