三月十八日(火)
朝、ケージの中で嘔吐してあった。茶色の液体。この日は群馬で仕事があり、午前中に出発しなければならないので、二日続けて妻に点滴受診をお願いする。妻によると昼間は傾眠傾向で動かなかったらしい。おやつもあまり食べない。
この日の摂取カロリーは110キロカロリー。水分は飲水110mlに点滴120mlの合計230ml。ただ、22時を過ぎてから急におやつの食いつきが良くなった。何が変化の元になったのかはわからないが、ここぞとばかりに未明にかけて断続的におやつを与えた。体重は変わらず4.50kg。
三月十九日(水)
飲水の調子は良い。元気そうにパトロールなどの活動をしていたが、嘔吐の後、だるそうにしている。
午後からの仕事なので、午前中にかかりつけ医へと行く事にした。
この日、大雪だった。駐車場への道すがら、キャリーケースの猫さんを見つめてから、空を見上げた。きっと、これが猫さんの見る最後の雪となるだろう。感傷に浸りながら、雪道を踏み締めていると涙が自然とこぼれて頬を伝う。
思ったよりも車に雪が積もっていて動揺する。北海道で十年運転してきた私だが、夏タイヤのまま車を発進させる事には躊躇いがあった。しかし、食事状況が良くなく、腎不全による多尿で体内から水が奪われているのであれば、点滴は欠かせない。水さえあれば、少しは命を延ばせるはず……。
踏切の手前でタイヤが空回りしてヒヤッとする。ゆっくりと雪を噛ませ、車を前に押し出すようにして発進する。この日ほど、かかりつけ病院が遠くに感じた日はなかった。たった三キロメートルほどの道のりなのに。
緊張の連続で、ようやく病院に到着する。大雪のせいか、いつもは待ち時間が少なくて四十分、長くて二時間なのに、この日は私と猫さんしか待合室に居なかった。他の患者さんは雪で遠慮したのだろう。私だったら、歩いてでも猫さんを連れて行っただろう。そこまでひどく弱っていた。点滴だけが頼りだった。
無事点滴を終えて時計を見ると、まだ午前十時にもなっていなかった。実は、この日、幼稚園の年中組に通う息子の終業式だった。たしか、午前十一時半まではやっていると妻が言ってたっけ。
猫さんの受診を優先して初めから諦めていたが、早く受診が終わった事により欲が出て来た。一年間お世話になった担任の先生に是非挨拶がしたい。ハイパーフリーダムで、教室からしょっちゅう脱走していた息子が、一年で劇的に変わったのだ。お礼を言うチャンスがやって来たのだ。
次回更新は5月31 日(日)、11時の予定です。
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