「八重沢に賽子の脱走を阻止するよう命じたのです。奴には全地形対応車に自動小銃やジャベリンまで与えてやったのに、賽子の返り討ちに遭って、五体バラバラに吹き飛ばされてしまいました。通常ならそれでおしまいですが、奴の唯一の能力が自己の細胞死を遅らせることだったんです。だから首だけになっても奴は生き残りました。

鷹山前総裁はそれに目をつけて、奴をサイボーグにしようと計画しました。しかし、予想以上に予算がかかり過ぎて、計画は中止となったのです。それ以来、奴はこの倉庫の奥に放置されています。係の者が時々世話をするくらいで、私も10年以上見ていません」

三人が資材置き場の物陰に来ると、人感センサーのライトがついて、その異様な物体が眼に入った。

卓球台くらいの大きな黒いテーブル様の機械で、モーターやポンプ等の機械類がテーブルの下にぎっしり配置されていた。その間を縫うように走っているビニール製のチューブの中を血液と思われる赤い液体が流動していた。

そしてそれらのチューブは全て、テーブルの中央に置かれているスキンヘッドの男の生首に繋がっていたのである。男は目を閉じていた。八重沢の顔を見ると、山口は毒虫でも見たかのように眉をしかめた。

「八重沢、目を覚ませ。鷹山前総裁は死亡した。こちらが新総裁の鷹山青竜様だ」

八重沢は眩しそうにしながらようやく目を開けた。

「ダレカトオモッタラヤマグチカ。オヤ、ウラギリモノノユウガマデイルジャナイカ。ジュウネンモオレヲコンナトコロニホウチシテ、イマサラナンノヨウダ? ミジメナスガタデモワライニキタカ?」

「申し訳ありません。声帯を失っているので予算がなくて、こんな金属的な機械音でしか話せないのです。おい、八重沢、新総裁の前だぞ。礼節を弁えろ」

「構わんよ。八重沢君、君は河原賽子に随分恨みを持っているようだね」

「シュピーッ!」

その名を聞くや否や、八重沢は顔を真っ赤にして憎しみで顔を歪めて白い歯を剥き出しにし、汽笛のような奇妙な金属音を張り上げた。テーブルの下のモーターやポンプの駆動が著しく速くなり、オーバーヒートのためか、焦げ臭い煙まで上がってきた。

「まあまあ、落ち着きたまえ。私は君に雪辱を晴らす機会を与えてやろうと思ってここまでわざわざ会いに来たのだよ。壊れた玩具のように放置されている君を最高の兵器に変えてやろう。そして、賽子に君の力を思い知らせてやるのだ」

八重沢は怒りを収めると、再び懐疑的な眼で青竜を見たが、次の瞬間、彼の体であるテーブルはぐるぐる回転しながら近くにあった資材をなぎ倒し、倉庫の中央に移動した。

目の前にあった戦闘機が一瞬で無数の部品に分解され、宙に浮いたかと思うと、目を丸くしている八重沢めがけて襲いかかった。

青竜はにやにやと笑っていたが、山口と西須はあまりのことに呆けたように立ち尽くしていた。

「サイコ6――怪物の誕生」終わり。「サイコ7――コンビナートの決闘」に続く。

 

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