でも、この世界から出たら、私は再び悲鳴を上げる。だから今は出ない。この世界に留まったままでいたい。安息したい。逃げたい。すべて忘れてしまいたい。枯れ木の中にこもったまま、時間を止めてしまいたい。

「ああ! どうしてこんなに苛(いら)つくのかしら」

私は吐き捨てるようにつぶやき、そのまま言葉を続けた。

「これは監視役の私だわ」

「監視役は、どうして苛ついているの?」

カウンセラーが尋ねた。

「さぁ?」

「喋りたくないのかしら?」

「たぶんね。恥部よ、恥部!」

私は吐き捨てるように言った。

「言いたくないことは、言わなくてもいいのよ」

「言いたくない? 違うわ。言えないのだわ。言いたいと思っているのに、言えないの。あんまり愚かすぎて、恥ずかしくて喋れないのよ」

「そんなに恥ずかしいこと? 何が?」

カウンセラーが尋ねた。

「ネコニャと過ごした日々? 変ね。どうしてそう思うのかしら」

私は答えを求めて自分の心の中を探りながら、自分に問うた。

「ああ、きっと失敗したからだわ。彼が消えてしまったという結論があるから、恥ずかしくて言えないのだわ」

「その結論が恥ずかしいのね?」

彼女が確認するように言った。

「結論が恥ずかしい? イヤね。何てプライドの高い女なのかしら。私って、そんなに偉い奴だったのかしら? いなくなっちゃったものはしょうがないって、どうして思えないのかしら」

私は顔をしかめた。

「そうよ。私はプライドが高いのだわ。だから逃げ込んでいるんだわ」

私は深く息をついた。

「喋る。眠りたいもの。この苦しさを処理したいの」

次回更新は4月24日(金)、14時の予定です。

 

👉『壺を抱いたネコニャ』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「凄いイケメンくんだ…ちょっと想像以上だわ」肩から少しずつ脱がされ、身体を重ねるような密着マッサージがはじまり…

【注目記事】不倫夫と離婚して1年。男性なんてと思っていたのに、初めて触れられた。「手を出して。柔らかいな、気持ちいい。」と言われ…